消滅可能性自治体と福祉の磁石
4月25日(木)の日経新聞1面に、「744自治体『消滅可能性』全国の4割 若年女性、30年で半減」という記事が載っていました。民間有識者でつくる「人口戦略会議」が24日、全国の市区町村のうち4割超にあたる744自治体が「消滅する可能性がある」との報告書を発表したそうです。20~39歳の女性人口が2050年にかけて減り、人口減に歯止めがかからないと指摘しています。
同様の調査は10年前の2014年にも行われ、その時は896の自治体が「消滅可能性自治体」とされました。当時消滅可能性を指摘された東京豊島区は、私立保育所を23年度までの8年間で5倍以上に増やし、池袋駅周辺には芝生やカフェを備えた公園を整備、若年女性は10年前から6%増となり、今回、消滅可能性を脱したのだそうです。
この記事を読んで、私は教育と再分配に関する研究で有名なピーターソンが1981年に提唱した「福祉の磁石」という概念を思い出しました。手厚い福祉政策を実施している地方自治体に人々が、まるで砂鉄のように吸い寄せられて集まってくる状況を表したものです。このように集まってくる人々は低所得者であることが多く、高所得者は税金や社会保険料の負担が重くなるのを嫌って去っていくため、地方自治体の財政が悪化してしまうと説きました。
福祉の磁石論は、子育て政策に絞って言っている訳ではないので、ぴったり当てはまる説ではないかもしれません。しかし、今の状況は限られたパイを地方自治体同士で奪い合っているだけで、パイ自体を増やそうという発想があまりないように思います。ピーターソンはこうも言っています。「福祉政策は地方自治体に任せるのではなく、財政規模の大きい国が統一的に行っていくのがベスト」だと。
私もこの考えに賛成です。どこで生まれても、どこに住んでも、日本国内であれば同じような子育て支援が受けられるのがベストで、それは地方自治体ではなく国の仕事です。住む場所によって子育てのしやすさが違うなんて、憲法の定める平等権に反するのではないでしょうか。(ちょっと大げさかもしれませんが…。)
もちろん、地方自治体がそれぞれ知恵を絞って、自分たちの市町村の人口を増やそうする努力は必要です。ただ、それが若年女性や子育て世帯の取り合いになってしまうようなら、それはちょっと違うかな?と感じました。