男性育休3割超え

厚生労働省は7月31日、男性の育児休業取得率が2023年度に30.1%と、前年度比13ポイント上がったことを発表しました。2019年度には7.48%しかなかった取得率ですが、2020年度には12.65%、2021年度13.97%、2022年度17.13%と着実に上がっていて、ここ5年でほぼ5倍となっています。(2018年度は6.16%)

これには、2022年4月に改正施行された育児介護休業法が大きく寄与しています。法改正後、出産・妊娠を申し出た従業員に対して、育休制度の周知や利用意向の確認を個別に行うよう、企業に義務付けたからです。それまでは個別の周知や確認までは求められていませんでしたから、いくら総務や人事が「うちにはこういう育休制度がありますよ」と周知しても、「そうは言っても取りづらい」と考える従業員が多かったのだと思います。

また、2023年4月からは従業員1001人以上の企業に、男性育休などの取得率の公表が義務付けられました。これも取得率アップの大きな要因です。厚生労働省が実施した18~25歳男女への調査では、育休を取得したいと回答した男性が84%、女性が91%でした。更に、就職活動の企業選びで育休取得状況が影響するとの回答は男性63%、女性で77%に達したそうです。育休取得率の低い企業は学生から選ばれなくなってしまうことを表す数字だと思います。

来年は、また育児介護休業法が改正施行されます。3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、事業主が職場のニーズを把握した上で、テレワークなど柔軟な働き方を実現するための措置を講じることが義務付けられます。これも個別の周知や意向確認を求めているので、「制度を利用してもいい」という認識が従業員により広まるものと予想されます。

しかし、気になるニュースも入ってきました。7月30日付の日経新聞は、育児休業などを理由に男性社員へ圧力をかける、いわゆる「パタハラ」が増えている、と報じました。「休みを取るなら辞めてもらう」「次の昇進はないと思え」厚生労働省の調査によると管理職男性の3人に1人がこういった言葉による被害を受けているそうです。

最近、SNS上で「子持ち様」という言葉をよく聞くようになりました。子育て中の従業員の事情で、他の従業員が、自分自身の業務負担が増えたなどの気持ちをSNSなどで吐き出す際に使われる皮肉めいた言葉です。男性育休が増えることは望ましいことですが、それによって負担の増える他の従業員や上司への目配せも同時に求められています。